1.桂枝湯の薬味の加減方

漢方処方を理解するのに、処方の薬味の働きと薬味の違いについて判らなければ、本当の漢方処方は、理解できません。
一つの症状を見ても、その漢方病理が判らなければ処方の使用の仕方がわからないからであります。
一味の薬味の違いで、作用するところがこの様に違ってまいります。

ここに、桂枝湯を中心にした処方の加減方を表にしてみました。。


○桂枝湯の薬味の加減方
(新古方薬嚢の薬味の分量)
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傷寒論・金匱要略より条文を引用してみますと

傷寒論「太陽病上篇第13条」より
●太陽の中風は陽浮にして陰弱、陽浮なる者は熱自から発し陰弱なる者は汗自から出づ、嗇嗇として悪寒し淅淅と悪風し翕翕と発熱し鼻鳴、乾嘔する者は桂枝湯之を主どる

傷寒論「太陽病上篇第14条」より
●太陽病、頭痛、発熱、汗出でて悪風する者は桂枝湯之を主どる

傷寒論「太陽病上篇第23条」より
●太陽病之を下したる後、脈促胸満する者は桂枝去芍薬湯之を主どる

傷寒論「太陽病中篇第94条」より
●焼鍼にて其の汗せしめたるに、鍼処寒を被り、核起って赤き者は、必ず奔豚を発す、氣少腹より、上って心を衝く者は、其の核上に灸すること、各一壮、桂枝加桂湯更に桂二両を加えたるをあたう

傷寒論「太陽病上篇第15条」より
●太陽病、項背強几几し、反って汗出で悪風するは桂枝加葛根湯之を主どる

金匱要略の「水氣病脈證併治第十四」の第29条に
●黄汗の病は、両脛自ずから冷ゆ、假令発熱すれば、此れ歴節に属す。
食し已り汗出で叉身に常に暮れに盗汗出づる者は、此れは労氣なり。
若し汗出已り、反って発熱するものは久久、其の身必ず甲錯す。
発熱病まざる者は必ず悪瘡を生ず、若し身重、汗出已り輒ち軽き者は、久久必ず身じゅんす、じゅんすれば即ち胸中痛みまた腰より以上必ず汗出で下に汗無く、腰臗弛痛し物有り皮中に在る状の如し、劇しき者は食する能わず、身疼重、煩燥し、小便不利す、此れ黄汗と為す。桂枝加黄耆湯之を主どる。

傷寒論「太陽病上篇第15条」より
●太陽病を汗を発したるに遂に漏れて止まず、其の人悪風し小便難く四肢微急し以って屈伸し難き者は桂枝加附子湯之を主どる

傷寒論「太陽病上篇第20条」より
●喘家には桂枝湯を作り厚朴杏子を加うるが佳し

金匱要略の「痙湿暍病脈證第二」の第11条より
●太陽病其の証備わり身体強ばり几几然として脈反って沈遅此れ痙となす括蔞桂枝湯之を主どる


桂枝
の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味辛温、上気欬逆、結気、喉痺、吐吸を主り、関節を利し、中を補い血を益す
薬徴に曰く 桂枝主治衝逆なり傍ら奔豚頭痛発熱悪風汗出身痛を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 桂枝は味辛温、汗を発し表を調う、叉衝逆を主どると謂わる、衝逆とは下から上へつきあぐる勢いを云う、動悸頭痛息切れ肩のはり等此れ衝逆より生ずる者あり、表の陽気虚する時はよく此衝逆を発す、桂枝よく表を救う、故に斯く称するものなるべし。
芍薬の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味苦平、邪気腹痛を主どり血痺を除き堅積を破り寒熱疝瘕を主どり痛を止め小便を利し氣を益すと。
薬徴に曰く 結實して拘攣するを主治し旁ら腹痛、頭痛、身体不仁、疼痛、腹満、咳逆、下痢、腫膿を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 結實とは凝りの事なり、拘攣とは引かれ引きつらるるを謂うなり、芍薬はよくたるみを引きしめ痛みを除くの効あり、結實も拘攣も弛みより来るものと見るべし。
葛根の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味甘平、毒なく消渇身大熱嘔吐諸痺を主どり陰気を起し諸毒を解くと。
薬徴に曰く 主治項背強也旁ら喘して汗出づるを治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 葛根は味甘平、此品は組織のこわばりを緩める効ありて其の作用する場所は主として首筋から背中へかけて働くものの如し。
黄耆の氣味と効用について
神農本草経に曰く 黄耆味甘微温、癰疽久敗瘡膿を排し痛を止どめ大風癩疾五痔鼠瘻を主どり虚を補い小児百病を主どると。
薬徴に曰く 肌表の水を主治す、故に皮水、黄汗、盗汗、身体の腫れ、不仁を治し、疼痛、小便不利を兼治す。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 黄耆味甘微温、外を補い堅きを緩め寒を除くことを主どる、故に自汗盗汗を治し肌表の滞を消す。
附子の氣味と効用について
薬徴に曰く 逐水を主どるなり、故によく悪寒身体四肢及骨節疼痛或沈重或不仁或厥冷を治し旁ら腹痛失精下痢するを治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 附子味辛温、表を實し陽を益し津液を保つ故に悪寒し厥冷を復す。
厚朴の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味苦温、中風傷寒頭痛寒熱驚悸の氣血痺死肌を主どり三蟲を去ると。
薬徴に曰く 主治胸腹脹満なり旁ら腹痛を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 腹を温め腹満を除く。叉胸満、咳、喘、上氣等を治し、或は咽喉の塞へを治す。併し其の根元は腹満にあり。
括蔞根の氣味と効用について
神農本草経に曰く 括蔞根味苦寒消渇身熱煩満大熱を主どり虚を補い中を安んじ絶傷を続くと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 括蔞根は之を本経の説及び傷寒金匱に用いらるる所とより考うれば渇を主どること疑いなかるべし、叉熱を消し小便を利し急を和する効ありとなす。而してその急を和する趣むきやや葛根に比すべし。本品は渇を治するも石膏と同じからず。小便を利するも茯苓と異なる。深重なる観察と周到なる注意とにより始めて之れを悟り得べきものならん。因みに述ぶ葛根は味甘平なり、石膏は味辛微寒なり、茯苓は味甘平なりと。
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# by shizennori | 2007-08-22 10:14 | 1.桂枝湯類の薬味