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5.黄連・黄芩剤の薬味の処方

黄連・黄芩の薬味は、苦寒剤・苦平剤であります。苦は心に入り、血を冷やし熱をとります。叉腸間の熱をとります。苦寒剤は、血の熱を冷やしますから、血の冷えのある人には使いません。

ここに黄連・黄芩の薬味の入った処方を表にして見ました。


○黄連・黄芩の入った処方の薬味の相違(新古方薬嚢の薬味の分量)
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傷寒論「太陽病下篇第22条」より
●傷寒五六日嘔して発熱する者は柴胡湯の證具る、而るに他薬を以って之れを下し柴胡の證仍ほ在る者は復た柴胡湯をあたふ、此れ已に之れを下すと雖も逆を為さず必ず蒸蒸として振るひ却って発熱汗出でて解す、若し心下満して鞕痛する者は此れを結胸となすなり、大陥胸湯、之れを主どる、但だ満して痛まざる者は之れを痞となす柴胡之れにあたふるに中らず、半夏瀉心湯によろし。


傷寒論「太陽病下篇第31条」より
●傷寒中風、醫反って之れを下し其の人下痢日に数十行穀化せず腹中雷鳴心下痞鞕して満、乾嘔心煩安きを得ず、醫心下痞するを見て病盡きずと謂ひ復之れを下し其の痞益す甚し、此れ結熱に非ず但だ胃中虚し客気上逆するを以っての故に鞕からしむるなり、甘草瀉心湯之れを主どる。

傷寒論「太陽病下篇第30条」より
●傷寒汗出で解するの後、胃中和せず、心下痞鞕、乾噫食臭、脅下水氣有り、腹中雷鳴下痢する者は、生姜瀉心湯之れを主どる。

傷寒論「太陽病下篇第46条」より
●傷寒、胸中熱有り、胃中に邪気有り、腹中痛み嘔吐せんと欲する者は、黄連湯之れを主どる。


金匱要略「驚悸吐衄下血胸満瘀血病脈證治第十六」第17条より
●心氣不足、吐血、衄血瀉心湯之れを主どる。


傷寒論「太陽病下篇第27条」より
●心下痞、之れに按ずれば濡、その脈関上に浮なる者は、大黄黄連瀉心湯之れを主どる。


傷寒論「太陽病下篇第28条」より
●心下痞して復た悪寒し汗出づる者は、附子瀉心湯之れを主どる。


半夏
の氣味と効用について
神農本草経に曰く 半夏味辛平、傷寒寒熱心下堅を主どり氣を下し咽喉腫痛頭眩胸脹欬逆を主どり腸鳴を主どり汗を止どむと。
薬徴に曰く 半夏主治痰飲嘔吐也旁ら心痛逆満、咽中痛、欬、悸、腹中雷鳴を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 半夏は氣を補ひ水を去る故によく嘔吐、腹中雷鳴、咳逆等を治す。叉咽痛を治す。
黄芩
の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味苦平、諸熱黄疸腸澼洩痢を主どり水を逐ひ血閉を下し悪瘡疽蝕火瘍を主どると。
薬徴に曰く 黄芩の主治心下痞なり旁ら胸脇満嘔吐、下痢を治すると。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 黄芩は熱を和し熱より生ずる心下痞、下痢、腹痛、身熱等を治すること黄連の如し而かもこの場合心。叉黄連は上部にゆくこと多く、黄芩は下部にゆく事多きものなり、またよく黄連に伍して用いられお互いにその効をつよむる事を為す。
乾姜
の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味辛温、味辛温、胸満欬逆上気を主をどり中を温め血を止どめ汗を出だし風湿痺を逐ひ腸澼下痢を主どる。生者尤も良し、久服すれば息気をまもり神明に通ずと。
薬徴に曰く 結滞水毒を主治するなり、旁ら嘔吐、咳、下痢、厥冷、煩躁、腹痛、胸痛、腰痛を治す。生の生姜と乾かした生姜とは元一物にして薬効大いに異なる、自然の妙瘍まことに窮究し難きもの多し、而して乾姜の場合は散辛化して歛辛となる、生姜は進むことを主どり乾姜は守ることを主どる、万物の変化まことに計り知るべからざる所あり、乾姜は深きを温むる効あり、故に厥を回し下痢を止め嘔を治す。
人参の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味甘微寒、五臓を補ひ精神を安んじ魂魄を定め驚悸を止どめ邪気を除き目を明らかにし心を開き智を益すことを主どり、久しく服すれば身を軽くし年を延ぶと。
薬徴に曰く 主治心下痞堅、痞鞭、支結なり旁ら不食嘔吐喜唾、心痛、腹痛、煩悸を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 乾きを潤し、しぶりを緩む。故に心下痞、痞堅、身痛、下痢、喜嘔、心痛、その他を治す。
黄連の氣味と効用について
神農本草経に曰く 黄連味苦寒、熱気目痛眥傷泣出を主どり
目を明らかにし、腸澼、腹痛、下痢、婦人陰中腫痛を主どり久服すれば人をして不忘ならしむと。

薬徴に曰く 黄連主治心中煩悸なり、旁ら心下痞、吐下、腹中痛を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 血の虚熱を去り虚熱より来る諸證を治す皮膚の痒み叉はタダレ心下の痞、下利出血、心煩、腹痛など皆それより生ずる證候となす。
応用 胸や腹の病ひ、叉はそれより来る発熱、心煩、下痢、腹痛、叉は皮膚の熱あるただれを治するに用ひらる。

大棗の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味甘平、心腹邪気を主どり中を安んじ脾を養ひ十二経を助け胃氣を平にし九竅を通じ少氣少津液身中の不足大驚四肢重を補ひ百薬を和し久服すれば身を軽くし年を延ぶと。
薬徴に曰く 攣引強急を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 攣引とはひきつり引かるる事なり、強急とはこはばりつまるなり、則ち大棗に緩和の効あるものと見ゆ、叉大棗には血の循りを良くするのハタラキあり。
甘草の氣味と効用について
神農本草経に曰く 甘草味甘平、五臓六腑寒熱邪気を主どり筋骨を堅め肌肉を長じ気力を倍にし金瘡の腫れや毒を解す久服すれば身を軽くし年を延ぶと。 
薬徴に曰く 甘草主治急迫なり故に裏急急痛を治し旁ら厥冷煩躁衝逆等の諸般急迫の毒を治すると。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 甘草は味甘平、緩和を主として逆をめぐらす効あり、逆とは正に反する事なり、めぐるとは元に戻る事なり、故によく厥を復し熱を消し痛を和らげ煩を治す。
生姜の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味辛温、胸満欬逆上氣を主どり中を温め血を止どめ汗を出だし風湿痺を逐ひ腸澼下痢を主どる生なる者尤も良し久服すれば息氣を主どり神明に通ずと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 生姜味辛温、氣を扶け外を實す、之れ生姜の発汗薬に多く用ひらるる所以なり。
桂枝の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味辛温、上気欬逆、結気、喉痺、吐吸を主り、関節を利し、中を補い血を益す
薬徴に曰く 桂枝主治衝逆なり傍ら奔豚頭痛発熱悪風汗出身痛を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 桂枝は味辛温、汗を発し表を調う、叉衝逆を主どると謂わる、衝逆とは下から上へつきあぐる勢いを云う、動悸頭痛息切れ肩のはり等此れ衝逆より生ずる者あり、表の陽気虚する時はよく此衝逆を発す、桂枝よく表を救う、故に斯く称するものなるべし。
大黄の氣味と効用について
神農本草経に曰く 大黄味苦寒、瘀血血閉を下し寒熱を主どり癥瘕積聚留飲宿食を破り腸胃を盪滌し陳きを推し新しきを致し水穀を通利し中を調へ食を化し五臓を安和することを主どると。
薬徴に曰く 大黄結毒を通利することを主どる、故によく胸満腹満腹痛及び便閉小便不利を治し旁ら発黄瘀血腫膿を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 裏に熱ありて大便出でず便秘し叉は下痢するを治す。叉腹痛、腹満を治す。或は内に熱あり、胃につかえありて吐する者を治す。或は頭痛する者を治す。大黄の行く所は内に熱あるが主なれば小便の色濃く口中燥き叉は眼の中赤き者等多し。
附子の氣味と効用について
薬徴に曰く 逐水を主どるなり、故によく悪寒身体四肢及骨節疼痛或沈重或不仁或厥冷を治し旁ら腹痛失精下痢するを治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 附子味辛温、表を實し陽を益し津液を保つ故に悪寒し厥冷を復す。
# by shizennori | 2007-09-05 19:37 | 5.黄連・黄芩の薬味