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2.麻黄剤の類処方

麻黄の薬味の入った処方の比較をしてみました。麻黄は一般的に発汗作用が強いため、胃腸の働きの弱い方には使用いたしません。叉、他には咳止めとか利水作用があります。

麻黄の使い方が金匱要略の「痰飲欬嗽病脈證併治第十二」の41条に出ています。

●水去り嘔止み其の人形はれたるものは、杏仁を加え、此れをつかさどる。其の證、麻黄を入るるに応ずれども、其の人遂に痺するを以っての故に、此れを入れず、もし、逆して之れを入るるものは、必ず厥す、しかるゆえんのものは、其の人血虚するに、麻黄、其の陽を発するをもっての故なり。

◎要するに、血虚すれば陽気が不足します。しかし、麻黄で更にその陽を発すれば、其の陽気が益々不足して手足を温めることができなくなります。これがいわゆる厥となるのであります。

ここに麻黄剤の処方を比較して表にしてみました。

○麻黄剤の類処方(新古方薬嚢の薬味の分量)
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傷寒論・金匱要略より条文を引用してみますと

傷寒論「太陽病中篇第5条」より
●太陽病頭痛、発熱、身疼、腰痛、骨節疼痛、悪風、汗無くして喘する者は麻黄湯之れをつかさどる


傷寒論「太陽病中篇第33条」より
●発汗後、更に桂枝湯を行うべからず、汗出て喘し、大熱無き者は、麻黄杏仁甘草石膏湯を与え此れを主るべし

金匱要略の「水氣病脈證併治第十四」の23条
●風水、悪風、一身悉く腫れ、脈浮、渇せず続いて自汗出で大熱無きは越婢湯此れを主どる

金匱要略の「水氣病脈證併治第十四」の5条
●裏水の者は、一身面目黄腫し、其の脈沈、小便不利故に水を病ましむ、もし小便自利すれば此れ津液をうしなう、故に渇せしむるなり、越婢加朮湯これを主どる

金匱要略の「中風歴節病脈證併治第五」の21条
●千金方越婢加朮湯は肉極熱すれば則ち身体の津脱し腠理開き汗大いに泄れ厲風氣下焦脚弱するを治す

金匱要略の「肺痿肺癰欬嗽上氣病脈證併治第七」の14条
●欬して上氣此れを肺脹となす、其の人喘し目脱状の如く脈浮大の者は越婢加半夏湯之を主どる


麻黄の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味苦温、中風傷寒頭痛温瘧をつかさどり表を発し汗を出だし邪熱の氣を去り欬逆上氣を止どめ寒熱を除き癥堅積聚を破る。
薬徴に曰く 麻黄主治喘咳水氣也旁ら悪風悪寒無汗身疼骨節痛一身黄腫を治す。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く よく表裏の水を逐う。故に汗を発し熱を解し喘を除き咳を鎮め、痛みを去り悪風寒を止どめ水氣を消す。
杏仁の氣味と効用について
薬徴に曰く 杏仁主治胸間の停水なり故に喘欬を治す而して旁ら短氣結胸心痛形体浮腫するを治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く よく腫を消し喘を定むと謂はる。其の本油分の緩和作用と芳香の発散作用とにあるは疑いなかるべし。
甘草の氣味と効用について
神農本草経に曰く 甘草味甘平、五臓六腑寒熱邪気を主どり筋骨を堅め肌肉を長じ気力を倍にし金瘡の腫れや毒を解す久服すれば身を軽くし年を延ぶと。 
薬徴に曰く 甘草主治急迫なり故に裏急急痛を治し旁ら厥冷煩躁衝逆等の諸般急迫の毒を治すると。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 甘草は味甘平、緩和を主として逆をめぐらす効あり、逆とは正に反する事なり、めぐるとは元に戻る事なり、故によく厥を復し熱を消し痛を和らげ煩を治す。
石膏の氣味と効用について
薬徴に曰く 主治煩渇也、旁ら譫語、煩躁、身熱を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 熱氣の泛乱を収め陽気の発散を助け熱による刺戟症状を緩解する能あるものの如し。
生姜の氣味と効用について
神農本草経に曰く 生姜味辛温、胸満欬逆上氣を主どり中を温め血を止どめ汗を出だし風湿痺を逐ひ腸澼下痢を主どる生なる者尤も良し久服すれば息氣を主どり神明に通ずと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 生姜味辛温、氣をたすけ外を實す、之れ生姜の発汗薬に多く用ひらるる所以なり。
大棗の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味甘平、心腹邪気を主どり中を安んじ脾を養ひ十二経を助け胃氣を平にし九竅を通じ少氣少津液身中の不足大驚四肢重を補ひ百薬を和し久服すれば身を軽くし年を延ぶと。
薬徴に曰く 攣引強急を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 攣引とはひきつり引かるる事なり、強急とはこはばりつまるなり、則ち大棗に緩和の効あるものと見ゆ、叉大棗には血の循りを良くするのハタラキあり。
白朮の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味苦温、風寒湿痺死肌痙疽を主どり汗を止め熱を除き食を消す。煎と作して餌すれば久しく服して身を軽くし年を延べ飢えずと。
薬徴に曰く 利水を主どるなり、故によく小便自利不利を治し旁ら身煩疼痰飲、失精、眩冒、下痢、喜唾を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 水をさばきその滞りを除きよく小便を調ふ。故に小便不利、小便自利を治す。不利は出工合悪きを謂ふ。叉小便少なきをも言ふ。自利はよく出る者を言ふ。則ち出過ぎる者の事。小便の出が悪い筈なのに反って出の好い者の事も自利と謂ふ。小便が少なくて下痢する者、小便の出が好くて便秘する者、筋や骨の痛む者、めまひのする者、頭の重い者、胃がふくれて食進まず或いは吐く者、朮のゆくべき場合には必ず小便の出工合を確むべし。
半夏の氣味と効用について
神農本草経に曰く 半夏味辛平、傷寒寒熱心下堅を主どり氣を下し咽喉腫痛頭眩胸脹欬逆を主どり腸鳴を主どり汗を止どむと。
薬徴に曰く 半夏主治痰飲嘔吐也旁ら心痛逆満、咽中痛、欬、悸、腹中雷鳴を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 半夏は氣を補ひ水を去る故によく嘔吐、腹中雷鳴、咳逆等を治す。叉咽痛を治す。
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by shizennori | 2007-08-22 15:36 | 2.麻黄剤の類処方