27.桃仁の薬味の入った処方の相違

桃仁〔苦平〕の薬味の入っている処方を傷寒論・金匱要略の中より取り出してみました。
動物薬の入っていないものと入っているものを分けて表にしてみました。


桃仁の入っている処方は、桃核承気湯・桂枝茯苓丸・大黄牡丹皮湯・治馬墜及一切筋骨方・抵当湯・抵当丸・下瘀血湯・大黄蟲丸であります。

○桃仁の入った処方の薬味の相違(新古方薬嚢の薬味の分量)

動物薬の入らない処方
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動物薬の入っている処方
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傷寒論・金匱要略より条文を引用してみますと

傷寒論「辨太陽病脈證併治中第六」の第81条より
●太陽病解せず、熱、膀胱に結して、其の人狂の如く、血自ずから下る、下る者は愈ゆ、其の外解せざる者は、尚未だ攻むべからず、當に先づ外を解す「べし、外解し已り、但少腹急結する者は、乃ち之れを攻むべし、桃核承気湯の方に宜し。


金匱要略「婦人妊娠病脈證并治第二十」の第2条より
●婦人、もと癥病あり、經たちて、未だ三月に及ばずして、漏下を得て止まず、胎動、臍上に在る者は、癥痼、妊娠を害するとなす、六月動ずる者は、前の三月、経水利する時の胎なり、下血の者は、のち断ちたる三月の衃なり、血止まざる所以の者は、其の癥去らざるが故なり、當に其の癥を下すべし桂枝茯苓丸之れを主どる。


金匱要略「瘡癰腸癰浸淫病脈證并治第十八」の第4条より
●腸癰の者、少腹腫痞し、之れを按ずれば、即て痛み、淋の如くにして、小便自ら調ひ、時時発熱して自汗出で、復た悪寒し、其の脈遅緊の者は、膿未だ成らず、之れを下すべし、當に血あるべし、脈洪數なる者は、膿已に成る、下す可からざるなり、大黄牡丹湯之れを主どる。


金匱要略「雑療方第二十三」の第17条より
馬墜及び一切の筋骨損ずるを治するの方

 大黄(一両切浸湯成下)  緋帛(如手大焼灰)  乱髮(如雞子大焼灰用)  久用炊単布(一尺焼灰)
 敗蒲(一握三寸)  桃仁(四十九個去皮尖熬)  甘草(如中指節炙剉)
右の七味を童子の小便量多少をもって煎じて湯なれば、酒一大盞を入れ、次に大黄を下し、滓をさり、分かち温めて三服す、先ず、敗蒲席半領をきざみ、湯を煎じて浴し、衣被にて蓋覆す、斯須に、通利數行し、痛楚たちどころに差ゆ、利及び浴水赤し、怪しむなかれ、即ち瘀血なり。


傷寒論「辨太陽病脈證併治中第六」の第101条より
●太陽病六七日、表證仍ほ在り、脈微にして沈、反って、結胸せず、其の人、狂を発する者のは、熱、下焦に在るを以て、少腹鞕満すべし、小便自利する者は、血を下せば、乃ち愈ゆ、然る所以の者は、太陽の經に随い、瘀熱、裏に在るを以ての故なり、抵當湯之れを主どる。

傷寒論「辨太陽病脈證併治中第六」の第102条より
●太陽病、身黄、脈沈結、少腹鞕く、小便利せざる者は、血無しと為すなり、小便自利し、其の人狂の如き者は、血の證たること諦かなり、抵當湯之れを主どる。


傷寒論「辨陽明脈證并治第八」の第58条より
●陽明の證、其の人喜忘する者は、必ず畜血有り、然る所以の者は、本と久瘀血有り、故に喜忘せしむ、屎、鞕しと雖も、大便は反って易し、其の色必ず黒し、宜しく抵當湯にて之れを下す。


傷寒論「辨陽明脈證并治第八」の第79条より
●病人に表裏の證無く、発熱して七八日なれば、脈浮数の者と雖も、之れを下すべし、假令し、已に下し、脈數、解せざるものは合熱すれば則ち消穀善飢す、六七日に至り、大便せざる者は、瘀血有り、抵當湯に宜し。


金匱要略「婦人雑病脈證并治第二十二」の第14条より
●婦人経水、利下せざるは、抵當湯之れを主どる、亦男子の膀胱、満急し、瘀血有る者をも治す。


傷寒論「辨太陽病脈證併治中第六」の第103条より
●傷寒、熱有り、少腹満すれば、當に小便利せざるに応ず、今反って利する者は、血有りとなすなり、當に之れを下すべし、餘薬すべからず、抵當丸に宜し。


金匱要略「婦人産後病脈證治第二十一」の第5条より
●師曰く、産婦の腹痛は、法當に枳實芍薬散を以てすべし、假令し愈えざる者は、此れ腹中に乾血有りて、臍下に着くとなす、宜しく下瘀血湯之れを主どるべし、亦經水不利をも主どる。


金匱要略「血痺虚労病脈證并治第六」の第18条より
●五勞虚極、羸痩腹満、飲食する能はず、食傷、憂傷、飲傷、房室傷、饑傷、勞傷、経絡榮衛氣傷、内に乾血あり、肌膚甲錯、両目黯黒するは、中を緩め、虚を補へ大黄蟲丸之れを主どる。


桃仁
の氣味と効用について
神農本草経に曰く 桃仁味苦平、瘀血血閉癥瘕邪氣を主どり小蟲を殺すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 血の燥きを潤し滞りを通じ結を解く、故に血證薬として廣く用ひらる。
大黄の氣味と効用について
神農本草経に曰く 大黄味苦寒、瘀血血閉を下し寒熱を主どり癥瘕積聚留飲宿食を破り腸胃を盪滌し陳きを推し新しきを致し水穀を通利し中を調へ食を化し五臓を安和することを主どると。
薬徴に曰く 大黄結毒を通利することを主どる、故によく胸満腹満腹痛及び便閉小便不利を治し旁ら発黄瘀血腫膿を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 裏に熱ありて大便出でず便秘し叉は下痢するを治す。叉腹痛、腹満を治す。或は内に熱あり、胃につかえありて吐する者を治す。或は頭痛する者を治す。大黄の行く所は内に熱あるが主なれば小便の色濃く口中燥き叉は眼の中赤き者等多し。
芒消の氣味と効用について
神農本草経に曰く 消石味苦寒五臓の積熱胃の脹閉を主どり蓄結飮食を滌去し陳きを推し新を致し邪氣を除く、之れを錬りて膏の如くし久服すれば身を軽く須、芒消。
薬徴に曰く 堅をやはらぐるを主どる也ゆえによく心下痞堅、心下石鞕、小腹急結、結胸、燥屎、大便鞕を治し旁ら宿食、腹満、小腹腫痞、等の諸般難解の毒を治する也と。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 芒消は味苦寒燥けるを潤し熱を鎮め血行を能くするの効あり、故に裏に熱ある諸病に用ふ。</font>
牡丹皮の氣味と効用について
神農本草経に曰く 牡丹辛寒、寒熱中風瘈瘲驚癇邪氣を主どり癥堅瘀血腸胃に留舎するを除き五臓を安じ癰瘡を療すと。
薬徴に曰く 牡丹皮、仲景之方中桂枝茯苓丸、八味丸、大黄牡丹湯以上三方牡丹皮ありと雖も而も以て主薬とならざる也、此の如きの類は皆其の全方の主治に従ひて之れを用ふ徴の如き姑く闕く、以て後人の君子を俟つなりと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 牡丹皮味辛寒、内の熱を散じ結滞を淨め消するの効あり。
冬瓜子の氣味と効用について
神農本草経に曰く 白冬瓜子味甘平、人をして悦澤ならしめ顔色を好くし氣を益し飢えず久服すれば身を軽くし老に耐ゆと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 冬瓜子は味甘平、刺戟を緩和し痛みを鎮むるの効あり。故に大黄牡丹湯に用ひらる。
乱髮の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 乱髮味苦温、氣を通じ寒を去る之れ大小便を利し又尿血を止むる所以なり、故に滑石白魚散中に配伍せられ小便不利を治す。
久用炊単布の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 穀気はよく氣血の循りをよくす、炊単布はよく穀気を隅々まで布くことをなすものの如し。又蒸炊布は湯氣に中てられたる毒を解する効ありと謂はる。
水蛭の氣味と効用について
神農本草経に曰く 水蛭味鹹平、逐悪血瘀血月閉を主どり血瘕積聚子無きを破り水道を利すと。
薬徴に曰く 主治血證也と。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 水蛭は血を潤ほし血を柔らぐ故に蓄血悪血等を除くに用ひらる、之れ生きたる蛭既に噛傷より出づる血の凝結を妨げ流れしむるを見て知るべし、故に乾物も亦よく血を結せしめざる効あるものならむ。瘀血とは病的に一処に滞りて流行し難きものの事を謂ふ。又生のひるは吸角の代用として血を吸はしむるに用ひらる。
蝱蟲の氣味と効用について
神農本草経に曰く 蝱蟲味苦微寒瘀血を逐ひ血積堅痞癥瘕寒熱を破下し血脈及び九竅を通利すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 蝱蟲は血を逐ひ滞血を去る事を主どる。故によく瘀血を除く。本品と水蛭と効相似て同じからざる所あり、水蛭は血を潤ほし蝱蟲は血を走らす、此れ水蛭と並び用ひらるる所なるべし。
の氣味と効用について
神農本草経に曰く 蟲味鹹寒、心腹寒熱洗洗血積癥瘕を主どり堅きを破り血閉を下し子を生ずと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 蟲味鹹寒、血を治す。特に其の結したるものを解く効あるが如し。
乾漆の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 乾漆は味辛温、ただれを愈やし濕りを乾かし悪瘡を治し勞を補ふと。故に乾漆は大黄蟲丸に配伍せられ諸の勞及び皮膚甲錯を治するに用ひらる、大黄蟲丸の方は蟲の部に在り。
蠐螬の氣味と効用について
神農本草経に曰く 蠐螬味鹹微温、悪血、血瘀、痺氣、破折して血脇下に在り堅滿痛、月閉、目中淫膚青翳白膜を主どると。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 蠐螬味鹹微温、血を治むる効あり、故に大黄蟲丸中に入る。
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by shizennori | 2008-05-13 19:30 | 27.桃仁の薬味の処方


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