23.澤瀉の入った処方の薬味の相違

澤瀉〔甘寒〕の入った処方の薬味の相違を考えてみました。
澤瀉の入った処方は、澤瀉湯・茯苓澤瀉湯・猪苓湯・五苓散・當歸芍薬散・八味丸・牡蛎澤瀉散
があります。
ここでは、牡蛎澤瀉散は、除いておきます。


澤瀉湯・茯苓澤瀉湯・猪苓湯・五苓散・當歸芍薬散・八味丸の薬味の相違を表にしてみました。

○澤瀉の入った処方の薬味の相違
(新古方薬嚢の薬味の分量)
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傷寒論・金匱要略より条文を引用しますと

金匱要略「痰飲欬嗽病脈證併治第十二」の第26条より
●心下に支飲あり、其の人冒眩を苦しむは、澤瀉湯之を主どる。

金匱要略「嘔吐噦下利病脈證治第十七」の第20条より
●胃反、吐して渇し水を飲まんと欲する者は茯苓澤瀉湯之を主どる。

傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第45条より
●陽明病脈浮にして緊、咽喉口苦腹満して喘、発熱汗出で悪寒せず反って悪熱身重す、若し汗を発すれば則ち燥し心憒憒として反って譫語し、若し焼き鍼を加わうれば必ず怵惕煩燥眠るを得ず、若し之を下せば則ち胃中空虚客気膈を動じ心中懊憹す、舌上胎の者は梔子豉湯之を主どる。若し渇し水を飲まんと欲し口乾舌燥する者は白虎加人参湯之を主どる。若し脈浮発熱渇し水を飲まんと欲し小便不利する者は猪苓湯之を主どる。

傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第46条より
●陽明病、汗出づること多くして渇する者は猪苓湯を與ふべからず。汗多く胃中燥くに猪苓湯復た其の小便を利するを以っての故なり。

傷寒論「辨少陰病脈證併治第十一」の第39条より
●少陰病下利六七日、欬して嘔渇し、心煩眠るを得ざる者は猪苓湯之を主どる。

金匱要略「消渇小便利淋病脈證併治第十三」の第14条より
●脈浮、発熱、渇して水を飲まんと欲し、小便利せざる者は猪苓湯之を主どる。

傷寒論「辨太陽病脈證併治中第六」の第41条より
●太陽病発汗後大いに汗出で胃中乾き煩燥眠るを得ず水を飲むを得んと欲する者には、少少與へ之を飲ませ胃氣をして和さしむれば則ち愈ゆ、若し脈浮小便不利微熱消渇する者は五苓散を與へて之を主どる。

傷寒論「辨太陽病脈證併治中第六」の第42条より
●汗を発し已り、脈浮數、煩渇する者は五苓散之を主どる。

傷寒論「辨太陽病脈證併治中第六」の第43条より
●傷寒汗出でて渇する者は五苓散之を主どる。渇せざる者は茯苓甘草湯之を主どる。

傷寒論「辨太陽病脈證併治中第六」の第44条より
●中風、発熱、六七日解せずして煩し表裏の證あり、渇して水を飲まんと欲し水入れば則ち吐する者は、名づけて水逆といふ、五苓散之を主どる。

傷寒論「辨太陽脈證併治下第七」の第14条より
●病、陽に在り、まさに汗を以て之れを解するに応ずるを反って、冷水を以て之れに灌き、若しくは之れに灌げば、其の熱、却けられて、去るを得ず、彌よ更に、益す煩し、肉上粟起す、意ろに、水を飲まんと欲して、反って、渇せざる者は、文蛤散を服す、若し差えざる者には五苓散を與ふ、寒實結胸し、熱證無き者は、三物小陥胸湯を與ふ、白散も亦、服すべし。

傷寒論「辨太陽脈證併治下第七」の第29条より
●本之れを下すを以ての故に心下痞し瀉心湯を與へて痞解せず、其の人渇して口燥煩、小便不利する者は五苓散之れを主どる。

傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第65条より
●太陽病寸緩關浮尺弱、其の人発熱、汗出で、復た悪寒、嘔せず、但だ心下痞する者は、此れ醫之れを下したるを以てなり。如し、其の下さざる者、病人悪寒せず渇する者は此れ轉じて陽明に属するなり。小便數なる者は、大便必ず鞕し、更衣せざること十日、苦しむ所なきなり。渇して水を飲まんと欲するは、少々之を與ふ、但だ法を以て之を救ふ、渇する者は、五苓散によろし。

傷寒論「辨霍乱病脈證併治第十三」の第6条より
●霍亂、頭痛発熱身疼痛、熱多く水を飲まんと欲する者は五苓散之を主どる、寒多く水を用いざる者は理中丸之を主どる。

金匱要略「痰飲欬嗽病脈證併治第十二」の第32条より
●假令、痩人、臍下に悸あり、涎沫を吐して癲眩す、此れ水なり、五苓散之を主どる。

金匱要略「痰飲欬嗽病脈證併治第十三」の第6条より
●渇して水を飲まんと欲し、水入れば則ち吐する者は、名づけて水逆と曰う、五苓散之を主どる。

金匱要略「婦人妊娠病脈證併治第二十」の第5条より
●婦人懐妊、腹中疞痛するは、当帰芍薬散之を主どる。

金匱要略「婦人雑病脈證併治第二十二」の第17条より
●婦人腹中諸疾痛するは、当帰芍薬散之を主どる。

金匱要略「中風歴節病脈證併治第五」の第20条より
●崔氏八味丸は脚気上って入り少腹不仁するを治す。

金匱要略「血痺虚労病脈證併治第六」の第15条より
●虚労腰痛少腹拘急、小便不利の者、八味腎気丸これを主どる。

金匱要略の「痰飲欬嗽病脈證併治第十二」の第18条より
●夫れ短気、微飲あり當に小便よりこれを去る。苓桂朮甘湯此れを主どる。腎気丸も亦た之を主どる。

金匱要略の「消渇小便利淋病脈證併治第十三」の第4条より
●男子消渇、小便反って多く、飲一斗をもって小便一斗なるは腎気丸之を主どる。

金匱要略の「婦人雑病脈證併治第二十二」の第19条より
●問て曰く婦人病みて飲食故の如く煩熱臥するを得ず、しかも反って倚息する者何ぞや。師の曰く此れを転胞と名づく溺を得ざるなり。胞系了房するを以っての故にこの病を致す。ただ小便を利すれば則ち愈ゆ。宜しく腎気丸これを主どるべし。

澤瀉
の氣味と効用について

神農本草経に曰く 澤瀉味甘寒、風寒濕痹乳難を主どり水を消し五臓を養ひ氣力を益し肥健せしむるを主どる久服すれば耳目聡明饑えず年を延べ身を軽くし面に光りを生じ能く水上を行かしむと。
薬徴に曰く 澤瀉主治小便不利冒眩なり旁ら渇を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 熱を去り燥きを潤すことをなす、故に刺戟を緩和することを主どる、その主目標は、渇ありて水を欲するもの、冒眩あるもの、小便不利あるもの等なり。

白朮
の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味苦温、風寒湿痺死肌痙疽を主どり汗を止め熱を除き食を消す。煎と作して餌すれば久しく服して身を軽くし年を延べ飢えずと。
薬徴に曰く 利水を主どるなり、故によく小便自利不利を治し旁ら身煩疼痰飲、失精、眩冒、下痢、喜唾を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 水をさばきその滞りを除きよく小便を調ふ。故に小便不利、小便自利を治す。不利は出工合悪きを謂ふ。叉小便少なきをも言ふ。自利はよく出る者を言ふ。則ち出過ぎる者の事。小便の出が悪い筈なのに反って出の好い者の事も自利と謂ふ。小便が少なくて下痢する者、小便の出が好くて便秘する者、筋や骨の痛む者、めまひのする者、頭の重い者、胃がふくれて食進まず或いは吐く者、朮のゆくべき場合には必ず小便の出工合を確むべし。
茯苓の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味甘平、胸脇逆氣憂恚驚邪恐悸心下結痛、寒熱煩満欬逆口焦舌乾を主どり小便を利し久服すれば魂を安んず神を養ひ飢えず年を延ぶと。
薬徴に曰く 茯苓の主治は悸及び肉じゅん筋惕なり旁ら小便不利、頭眩、煩燥を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 水を収め乾きを潤しその不和を調ふ故に動悸を鎮め衝逆を緩下し水を利して眩悸等を治す。
甘草の氣味と効用について
神農本草経に曰く 甘草味甘平、五臓六腑寒熱邪気を主どり筋骨を堅め肌肉を長じ気力を倍にし金瘡の腫れや毒を解す久服すれば身を軽くし年を延ぶと。 
薬徴に曰く 甘草主治急迫なり故に裏急急痛を治し旁ら厥冷煩躁衝逆等の諸般急迫の毒を治すると。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 甘草は味甘平、緩和を主として逆をめぐらす効あり、逆とは正に反する事なり、めぐるとは元に戻る事なり、故によく厥を復し熱を消し痛を和らげ煩を治す。
桂枝の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味辛温、上気欬逆、結気、喉痺、吐吸を主り、関節を利し、中を補い血を益す
薬徴に曰く 桂枝主治衝逆なり傍ら奔豚頭痛発熱悪風汗出身痛を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 桂枝は味辛温、汗を発し表を調う、叉衝逆を主どると謂わる、衝逆とは下から上へつきあぐる勢いを云う、動悸頭痛息切れ肩のはり等此れ衝逆より生ずる者あり、表の陽気虚する時はよく此衝逆を発す、桂枝よく表を救う、故に斯く称するものなるべし。
生姜の氣味と効用について
神農本草経に曰く 生姜味辛温、胸満欬逆上氣を主どり中を温め血を止どめ汗を出だし風湿痺を逐ひ腸澼下痢を主どる生なる者尤も良し久服すれば息氣を主どり神明に通ずと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 生姜味辛温、氣をたすけ外を實す、之れ生姜の発汗薬に多く用ひらるる所以なり。
猪苓の氣味と効用について
薬徴に曰く 猪苓主治渇して小便不利なりと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 渇を止どめ小便を利するの効あり。大概内に熱あるものを治す。小便利せずして嘔吐するものにも宜し。
阿膠の氣味と効用について
神農本草経に曰く 阿膠味甘平、心腹内崩勞極灑灑として瘧状の如く腰腹痛四肢酸疼女子下血を主どり跆を安んず久しく服すれば身を軽くし氣を益すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 阿膠は味甘平、肌肉の傷れを治し急を緩るむることを主どると。故に出血を止どめ煩を去る。
滑石の氣味と効用について
神農本草経に曰く 滑石味甘寒、身熱洩澼女子乳難癃閉を主どり小便を利し胃中の積聚寒熱を蕩し精氣を益し久服すれば身を軽くし飢に耐え年を長くすと。
薬徴に曰く 滑石の主治は小便不利なり旁ら渇を治する也と。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 滑石味甘寒、急を鎮め熱を去り塞を開く、故に渇を治し小便を利す。故に滑石の治し得る小便の不利には必ずのどの渇きあるものとなす、之れなき者は滑石の主治する所にはあらざるべし。
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by shizennori | 2008-03-07 20:53 | 23.澤瀉の薬味の処方


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