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19.柴胡剤の処方と薬味の相違

傷寒論・金匱要略における柴胡剤の処方と薬味の違いについて考えてみました。
柴胡剤を、体力のある方に使用する順序で整理してみました。
それには、柴胡剤の処方の薬味の違いを認識しなければなりません。

傷寒論・金匱要略の中から柴胡剤の処方を表にしてみました。


○柴胡剤の処方と薬味の相違(新古方薬嚢の薬味の分量)
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傷寒論・金匱要略より条文を引用してみますと

傷寒論「辨太陽病脉證併治中第六」の第78条より
●太陽病、過經十餘日、反って二三、之れを下し後四五日、柴胡の證仍ほ在る者には先づ小柴胡湯を與ふ、嘔止まず心下急、鬱鬱微煩する者は、未だ解せずと爲すなり、大柴胡湯を與へ、之れを下せば則ち愈ゆ。


傷寒論「辨太陽脉證併治下第七」の第9条より
●傷寒、十餘日、熱結裏に在り、復た、往来寒熱する者には、大柴胡湯を與ふ、但だ、結胸し、大熱無き者は、此れ水結、胸脅に在りと為すなり、但だ頭に微汗出づる者は、大陥胸湯之れを主どる。


傷寒論「辨太陽脉證併治下第七」の第38条より
●傷寒発熱汗出でて解せず、心中痞鞕嘔吐して下痢する者は、大柴胡湯之れを主どる。


傷寒論「辨可下脈證併治第二十一」の第10条より
●傷寒後の脈沈、沈なる者は、内實なり、下して之れを解せ、大柴胡湯に宜し。


金匱要略「腹満寒疝宿食病脈證治第十」の第13条より
●之れを按じ心下滿痛する者は、此れ實と為すなり、當に之れを下すべし、大柴胡湯に宜し。


傷寒論「辨少陰病脈證併治第十一」の第38条より
●少陰病、四逆、其の人或いは欬し、或いは悸し、或いは小便不利、或いは腹中痛み、或いは泄利下重する者、四逆散之れを主どる。


傷寒論「辨太陽病脈證併治中第六」の第82条より
●傷寒八九日、之れを下し、胸満、煩し、驚す。小便不利、譫語し一身盡く重く転側すべからざる者、
柴胡加竜骨牡蛎湯之れを主どる。


傷寒論「辨太陽病脉證併治中第六」の第79条より
●傷寒十三日解せず、胸脇満して嘔し、日晡所、潮熱を発し已って而して微利するは、此れ本と柴胡の證、之れを下して利すること得ざるに、今反って利する者は、醫、丸薬を以って之れを下すを知る、其の治に非ざるなり、潮熱する者は、實なり、先ず宜しく小柴胡湯にて、以って外を解し、後、柴胡加芒硝湯を以って之れを主どるべし。

傷寒論「辨太陽病脈證併治中第六」の第7条より
●太陽病十日以去、脈浮細にして臥するを嗜む者は、外已に解するなり、設し胸満脇痛する者は、小柴胡湯を與へ、脈但だ浮なる者には麻黄湯を與ふ。


傷寒論「辨太陽病脈證併治中第六」の第69条より
●傷寒、五六日、中風、往来寒熱、胸脇苦満、黙黙として飮食を欲せず、心煩喜嘔し、或いは胸中煩して嘔せず、或いは渇し、或いは腹中痛み、或いは脇下痞硬し、或いは心下悸小便不利、或いは渇せず身に微熱あり、或いは欬する者は小柴胡湯を與へて之れを主どる。


傷寒論「辨太陽病脈證併治中第六」の第70条より
●血弱氣盡き、腠理開き、邪氣因って入れば、正気と相ひ搏ち、胸下に結ぼれ、正邪分争し、往来寒熱、休作時あり、黙黙として飮食を欲せず、藏府に相連ぬれば、其の痛み必ず下る、邪高く痛み下る、故に嘔せしむるなり、小柴胡湯之れを主どる。


傷寒論「辨太陽病脈證併治中第六」の第72条より
●病を得て六七日、脈遅浮弱、風寒をにくみ、手足温、醫、二三之れを下し、食する能はず、而して脇下滿痛し、面目及び身黄、頸項強ばり、小便難き者は、柴胡湯を與ふれば、後必ず下重す、本と渇して水を飲み、嘔する者も、柴胡湯は與ふるに中らざるなり、穀を食する者は噦す。


傷寒論「辨太陽病脈證併治中第六」の第73条より
●傷寒四五日、身熱悪風し、頸項強ばり、胸下満、手足温にして渇する者は、小柴胡湯之れを主どる。


傷寒論「辨太陽病脈證併治中第六」の第74条より
●傷寒陽脈澀、陰脈弦、法當に腹中急痛すべき者には、先ず小建中湯を與ふ、差えざる者は小柴胡湯を與へて之れを主どる。


傷寒論「辨太陽病脉證併治中第六」の第79条より
●傷寒十三日解せず、胸脇満して嘔し、日晡所、潮熱を発し已って而して微利するは、此れ本と柴胡の證、之れを下して利すること得ざるに、今反って利する者は、醫、丸薬を以って之れを下すを知る、其の治に非ざるなり、潮熱する者は、實なり、先ず宜しく小柴胡湯にて、以って外を解し、後、柴胡加芒硝湯を以って之れを主どるべし。

傷寒論「辨太陽病脉證併治中第六」の第78条より
●太陽病、過經十餘日、反って二三、之れを下し後四五日、柴胡の證仍ほ在る者には先づ小柴胡湯を與ふ、嘔止まず心下急、鬱鬱微煩する者は、未だ解せずと爲すなり、大柴胡湯を與へ、之れを下せば則ち愈ゆ。


傷寒論「辨太陽病脉證併治下第七」の第17条より
●婦人中風七八日、続いて寒熱を得発作時有り、経水適ま断つ者は、此れ熱血室に入ると為す、其の血必ず結す、故に瘧状の如く発作時有らしむ、小柴胡湯之れを主どる。


傷寒論「辨太陽病脉證併治下第七」の第21条より
●傷寒五六日頭汗出で微悪寒、手足冷、心下満、口食するを欲せず、大便鞕く、脈細なる者は此れ陽微に結すると為す、必ず表に有り、復た裏に有るなり、脈沈も亦裏に在るなり、汗出づるを陽微と為す、もし純陰結すれば復た外證有るを得ず、悉く入りて裏に在り、此れは半ば裏に在り、半ば外に在りと為すなり、脈沈緊と雖も少陰の病と為すを得ず、然る所以の者は、陰は汗有るを得ざるに今頭汗出づ、故に少陰に非ざるを知るなり、小柴胡湯を與ふべし、設し了了たらざる者は、屎を得て解す。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第51条より
●陽明病、潮熱を発し、大便溏、小便自ら可、胸脇満去らざる者は、小柴胡湯之れを主どる。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第52条より
●陽明病、胸下鞕満大便せずして嘔し、舌上白胎の者は、小柴胡湯を與ふべし、上焦通ずるを得、津液下るを得て、胃氣因って和し、身に濈然として汗出で解するなり。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第53条より
●陽明の中風、脉弦浮大にして短氣、腹都て満、脇下及び心痛し久しく之れを按ずるも氣通ぜず、鼻乾き汗するを得ず、臥するを嗜み一身及び面目悉く黄、小便難、潮熱有りて時時噦す、耳の前後腫れ、之を刺せば、小しく差ゆるも外解せず、病十日を過ぎ、脉続いて浮の者は小柴胡湯を與ふ、脉但だ浮、餘證無き者は麻黄湯を與う、若し尿せず、腹満、噦を加ふる者は治せず。


傷寒論「辨少陽病脈證併治第九」の第4条より
●本と太陽病、解せず、轉じて少陽に入る者は、胸下鞕満、乾嘔、食する能はず、往来寒熱す、尚ほ未だ吐下せず、脈沈緊なる者は、小柴胡湯を與ふ。


傷寒論「辨厥陰病脈證併治第十二」の第55条より
金匱要略の「嘔吐噦下利病脈證併治第十七」の第17条より
●嘔して発熱する者は、小柴胡湯之れを主どる。


金匱要略「黄疸病脈證併治第十五」の第23条より
●諸の黄、腹痛んで嘔する者は、柴胡湯に宜し。


金匱要略「婦人産後病脈證併治第二十一」の第1条より
●産婦鬱冒は、其の脈微弱、嘔して食する能はず、大便反って堅く、但だ頭汗出づ、然る所以の者は、血虚して厥す、厥して必ず冒す、冒家解せんと欲すれば、必ず大いに汗出づ、血虚下厥し、弧陽上に出づるをもっての故に、頭汗出づ、産婦しばしば汗出づる所以者は、陰を亡ぼし血虚し、陽気独り盛んなるがゆえに當に汗出でて、陰陽すなはち復すべし、大便堅く、嘔して食する能はざるは、小柴胡湯之れをつかさどる。


金匱要略「婦人産後病脈證併治第二十一」の第11条より
●千金三物黄芩湯は、婦人草蓐ありて自ら発露し風を得たるを治す、四肢苦煩熱、頭痛する者は小柴胡湯を與へ、頭痛まず但だ煩する者は、此の湯之れを主どる。


金匱要略「瘧病脈證併治第四」の第7条より
柴胡去半夏加括蔞湯は瘧病、渇を発する者を治し亦勞瘧をも治す。


傷寒論「辨太陽病脉證併治下第七」の第19条より
●傷寒六七日、発熱微悪寒、支節煩疼、微嘔、心下支結、外證未だ去らざる者は、柴胡桂枝湯之れを主どる。


傷寒論「辨発汗後病脉證併治第十七」の第1条より
●汗を発すること多く、亡陽譫語する者は、下すべからず、柴胡桂枝湯を與へ、其の榮衛を和し、以って津液を通ずれば後ち自ら愈ゆ。


金匱要略「腹満寒疝宿食病脈證併治第十」の第22条より
●外臺柴胡桂枝湯の方、心腹卒中痛する者を治す。


傷寒論「辨太陽脈證併治下第七」の第20条より
●傷寒五六日已に発汗して復た之れを下し、胸脇満、微結し、小便不利、渇して、嘔せず、但頭汗出で、往来寒熱、心煩する者は、此れ未だ解せざると為す、柴胡桂枝乾姜湯之れを主どる。


金匱要略「瘧病脈證併治第四」の第8条より
柴胡桂薑湯は、瘧寒多く微に熱有り或は但寒して熱せざるを治す。


柴胡の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 半表半裏の熱を去る、故に胸脇苦満、胸中痛、心煩、往来寒熱、頸項強、胸下痞鞕、心下満等を治す。
の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 黄芩は熱を和し熱より生ずる心下痞、下痢、腹痛、身熱等を治すること黄連の如し而かもこの場合心。叉黄連は上部にゆくこと多く、黄芩は下部にゆく事多きものなり、またよく黄連に伍して用いられお互いにその効をつよむる事を為す。
半夏の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 半夏は氣を補ひ水を去る故によく嘔吐、腹中雷鳴、咳逆等を治す。叉咽痛を治す。
生姜の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 生姜味辛温、氣を扶け外を實す、之れ生姜の発汗薬に多く用ひらるる所以なり。
人参の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 乾きを潤し、しぶりを緩む。故に心下痞、痞堅、身痛、下痢、喜嘔、心痛、その他を治す。
甘草の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 甘草は味甘平、緩和を主として逆をめぐらす効あり、逆とは正に反する事なり、めぐるとは元に戻る事なり、故によく厥を復し熱を消し痛を和らげ煩を治す。
大棗の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 攣引とはひきつり引かるる事なり、強急とはこはばりつまるなり、則ち大棗に緩和の効あるものと見ゆ、叉大棗には血の循りを良くするのハタラキあり。
牡蠣の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 牡蠣は味鹹平乾きを潤し血氣の行を調へ和す、故に胸脇下の痞へを柔らげ或は寒瘧を治し或は水氣を除き又は驚きを鎮むる等の能をなす。
の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 括蔞根は之を本経の説及び傷寒金匱に用いらるる所とより考うれば渇を主どること疑いなかるべし、叉熱を消し小便を利し急を和する効ありとなす。而してその急を和する趣むきやや葛根に比すべし。本品は渇を治するも石膏と同じからず。小便を利するも茯苓と異なる。深重なる観察と周到なる注意とにより始めて之れを悟り得べきものならん。因みに述ぶ葛根は味甘平なり、石膏は味辛微寒なり、茯苓は味甘平なりと。
桂枝の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 桂枝は味辛温、汗を発し表を調う、叉衝逆を主どると謂わる、衝逆とは下から上へつきあぐる勢いを云う、動悸頭痛息切れ肩のはり等此れ衝逆より生ずる者あり、表の陽気虚する時はよく此衝逆を発す、桂枝よく表を救う、故に斯く称するものなるべし。
乾姜の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味辛温、味辛温、胸満欬逆上気を主をどり中を温め血を止どめ汗を出だし風湿痺を逐ひ腸澼下痢を主どる。生者尤も良し、久服すれば息気をまもり神明に通ずと。
薬徴に曰く 結滞水毒を主治するなり、旁ら嘔吐、咳、下痢、厥冷、煩躁、腹痛、胸痛、腰痛を治す。生の生姜と乾かした生姜とは元一物にして薬効大いに異なる、自然の妙瘍まことに窮究し難きもの多し、而して乾姜の場合は散辛化して歛辛となる、生姜は進むことを主どり乾姜は守ることを主どる、万物の変化まことに計り知るべからざる所あり、乾姜は深きを温むる効あり、故に厥を回し下痢を止め嘔を治す。
芍薬の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 結實とは凝りの事なり、拘攣とは引かれ引きつらるるを謂うなり、芍薬はよくたるみを引きしめ痛みを除くの効あり、結實も拘攣も弛みより来るものと見るべし。
枳實の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 味苦寒、熱をさまし、しこりを消すの効あり。又痛みをゆるめ腫を去る、故に諸の熱實病又は癰腫等を治するに用いらる。
龍骨の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 龍骨は内を補ひ縮まりを緩め血氣を調へ和す、故にボクは本品に頭をやすめ氣を落付かせ疲労を治する能ありと言ふ。
茯苓の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 水を収め乾きを潤しその不和を調ふ故に動悸を鎮め衝逆を緩下し水を利して眩悸等を治す。
大黄の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 味苦寒、裏に熱ありて大便出でず便秘し叉は下痢するを治す。叉腹痛、腹満を治す。或は内に熱あり、胃につかえありて吐する者を治す。或は頭痛する者を治す。大黄の行く所は内に熱あるが主なれば小便の色濃く口中燥き叉は眼の中赤き者等多し。
芒消の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 味苦寒、芒消は味苦寒燥けるを潤ほし熱を鎮め血行を能くするの効あり、故に裏に熱ある諸病に用ふ。
by shizennori | 2007-12-12 20:20 | 19.柴胡剤の薬味の相違


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