16.梔子豉湯類の薬味の相違

梔子や香豉の入った類処方を集めてみました。梔子〔苦寒〕・香豉〔甘寒〕で、どちらも熱をさる作用があります。平常、冷え性の方には、用いません。

ここに梔子豉湯類の処方を傷寒論・金匱要略の中より取り出してみました。


○梔子湯類の処方の薬味の相違(新古方薬嚢の薬味の分量)
c0130221_21102231.gif

傷寒論・金匱要略より条文を引用してみますと

傷寒論「辨太陽病脉證併治第六」の第48条より
●汗を発し吐下したる後、虚煩眠るを得ず、若し劇しき者は、必ず反覆顚倒し、心中懊憹す、梔子豉湯之れを主どる。


傷寒論「辨太陽病脉證併治第六」の第50条より
●汗を発し若しくは之を下し而して煩熱強中窒がる者は、梔子豉湯之れを主どる。


傷寒論「辨太陽病脉證併治第六」の第51条より
●傷寒五六日、大いに之を下したる後、身熱去らず、心中結痛する者は、未だ解せんと欲せざるなり、
梔子豉湯之れを主どる。


傷寒論「辨太陽病脉證併治第六」の第54条より
●凡そ梔子湯を用ゆるに病人舊くより微溏する者には與に之を服さすべからず。


傷寒論の「辨陽明脈證併治第八」の第45条より
●陽明病脈浮にして緊、咽喉口苦腹満して喘、発熱汗出で悪寒せず反って悪熱身重す、若し汗を発すれば則ち燥し心憒憒として反って譫語し、若し焼き鍼を加わうれば必ず怵惕煩燥眠るを得ず、若し之を下せば則ち胃中空虚客気膈を動じ心中懊憹す、舌上胎の者は、梔子豉湯之を主どる。


傷寒論の「辨陽明脈證併治第八」の第50条より
●陽明病、之を下し其の外に熱あり、手足温かく結胸せず、心中懊憹飢えて食する能はず、但頭汗出づる者は、梔子豉湯之れを主どる。


傷寒論の「辨厥陰病脈證併治第十二」の第51条より
●下利の後、更に煩し之を按ずれば心下濡なる者は、虚煩と為すなり、梔子豉湯に宜し。


傷寒論「辨太陽病脉證併治第六」の第48条より
●汗を発し吐下したる後、虚煩眠るを得ず、若し劇しき者は、必ず反覆顚倒し、心中懊憹す、梔子豉湯之れを主どる。若し少氣の者は、梔子甘草豉湯の之れを主どる。


傷寒論「辨太陽病脉證併治第六」の第48条より
●汗を発し吐下したる後、虚煩眠るを得ず、若し劇しき者は、必ず反覆顚倒し、心中懊憹す、梔子豉湯之れを主どる。若し嘔する者は、梔子生薑豉湯の之れを主どる。


傷寒論「辨太陽病脉證併治第六」の第52条より
●傷寒下して後、心煩腹満し臥起安からざる者は、梔子厚朴湯之れを主どる。


傷寒論「辨太陽病脉證併治第六」の第53条より
●傷寒醫丸薬を以て大いに之を下し、身熱去らず微煩する者は、梔子乾薑湯之れを主どる。


傷寒論の「辨陽明脈證併治第八」の第83条に
●傷寒、身黄発熱する者、梔子蘗皮湯之れを主る。


金匱要略の「黄疸病脈證併治第十五」の第17条に
●酒黄疸、心中懊憹或いは熱痛するは、梔子大黄湯之れを主る。


傷寒論「辨陰陽易差後勞復病證併治第十四」の第2条より
●大病差へて後、勞復する者は、枳實梔子湯之れを主どる。


傷寒論の「辨陽明脈證併治第八」の第57条に
●陽明病、発熱汗出づ、此れ熱越と為す、発黄する能はず、但だ頭汗出で、身汗無し、剤頸而還、小便不利、渇して水漿を引く者、此れ瘀熱裏に在りと為す。身必ず発黄す、茵蔯蒿湯之れを主る。


傷寒論の「辨陽明脈證併治第八」の第82条に
●傷寒七八日身黄橘子色の如し、小便不利、腹微満する者、茵蔯蒿湯之れを主る。


金匱要略の「黄疸病脈證併治第十五」の15条に
●穀疸の病ひたる寒熱食せず、食すれば即ち頭眩し、心胸安からず久久黄を発し、穀疸となす茵蔯蒿湯之を主どる。


梔子の氣味と効用について
神農本草経に曰く 梔子味苦寒、五内邪氣、胃中熱氣、面赤、酒皰皶鼻、白癩、赤癩、瘡瘍を主どると。
薬徴に曰く 梔子主治心煩なり、旁ら発黄を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 熱を去り胸中のもだへ苦しみを除き、或は心中の痛みを鎮め、又はのどの窒がりを開き、又よく不眠を治す。梔子は熱を去るが主能なれば平常冷え性にて腹下り易き者などには宜しからず。但し内に熱ありて下利し又は下剤を用ひて強いて下し、其の餘毒が去らずして下り居る者には用ふる事あり。
の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 香豉は味甘寒、胸心中の鬱熱を除くの効あり。故に梔子豉湯、
枳實梔子豉湯、瓜蒂散等には缼くべからざるものなり。

甘草の氣味と効用について
神農本草経に曰く 甘草味甘平、五臓六腑寒熱邪気を主どり筋骨を堅め肌肉を長じ気力を倍にし金瘡の腫れや毒を解す久服すれば身を軽くし年を延ぶと。 
薬徴に曰く 甘草主治急迫なり故に裏急急痛を治し旁ら厥冷煩躁衝逆等の諸般急迫の毒を治すると。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 甘草は味甘平、緩和を主として逆をめぐらす効あり、逆とは正に反する事なり、めぐるとは元に戻る事なり、故によく厥を復し熱を消し痛を和らげ煩を治す。
生姜の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味辛温、胸満欬逆上氣を主どり中を温め血を止どめ汗を出だし風湿痺を逐ひ腸澼下痢を主どる生なる者尤も良し久服すれば息氣を主どり神明に通ずと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 生姜味辛温、氣を扶け外を實す、之れ生姜の発汗薬に多く用ひらるる所以なり。
厚朴の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味苦温、中風傷寒頭痛寒熱驚悸の氣血痹死肌を主どり三蟲を去ると。
薬徴に曰く 主治胸腹脹満なり旁ら腹痛を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 味苦温、腹を温め腹満を除く。叉胸満、咳、喘、上氣等を治し、或は咽喉の塞へを治す。併し其の根元は腹満にあり。
枳實の氣味と効用について
神農本草経に曰く 枳實味苦寒、大風皮膚中に在り麻豆の如く痒きを苦しむを主どり寒熱の結を除き痢を止め肌肉を長じ五臓を利し氣を益し身を軽くすと。 
薬徴に曰く 枳實主治結實の毒なり旁ら胸満胸痺腹満腹痛を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 味苦寒、熱をさまし、しこりを消すの効あり。又痛みをゆるめ腫を去る、故に諸の熱實病又は癰腫等を治するに用いらる。
乾姜の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味辛温、胸満欬逆上気を主をどり中を温め血を止どめ汗を出だし風湿痺を逐ひ腸澼下痢を主どる。生者尤も良し、久服すれば息気をまもり神明に通ずと。
薬徴に曰く 結滞水毒を主治するなり、旁ら嘔吐、咳、下痢、厥冷、煩躁、腹痛、胸痛、腰痛を治す。生の生姜と乾かした生姜とは元一物にして薬効大いに異なる、自然の妙瘍まことに窮究し難きもの多し、而して乾姜の場合は散辛化して歛辛となる、生姜は進むことを主どり乾姜は守ることを主どる、万物の変化まことに計り知るべからざる所あり、乾姜は深きを温むる効あり、故に厥を回し下痢を止め嘔を治す。
黄蘗の氣味と効用について
神農本草経に曰く 蘗木味苦寒、五臓腸胃中の結熱黄疸腸痔を主どり洩痢女子漏下赤白を止どめ陰陽傷蝕を主どると
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 黄蘗味苦寒、血熱を去り、下利を止どめ、腹痛を治す。又黄疸を治す。何れも熱を除くが本薬の主どる所となり。
大黄
の氣味と効用について
神農本草経に曰く 大黄味苦寒、瘀血血閉を下し寒熱を主どり癥瘕積聚留飲宿食を破り腸胃を盪滌し陳きを推し新しきを致し水穀を通利し中を調へ食を化し五臓を安和することを主どると。
薬徴に曰く 大黄結毒を通利することを主どる、故によく胸満腹満腹痛及び便閉小便不利を治し旁ら発黄瘀血腫膿を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 裏に熱ありて大便出でず便秘し叉は下痢するを治す。叉腹痛、腹満を治す。或は内に熱あり、胃につかえありて吐する者を治す。或は頭痛する者を治す。大黄の行く所は内に熱あるが主なれば小便の色濃く口中燥き叉は眼の中赤き者等多し。
の氣味と効用について
神農本草経に曰く 茵蔯蒿味苦平、風濕寒熱邪氣熱結黄疸を主どり久服すれば身を軽くし益し老に耐へしむと。
薬徴に曰く 茵蔯蒿発黄を主治する也と。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 茵蔯蒿は味苦平皮中の鬱熱を発することを主どる。故に黄疸を治す。
[PR]
by shizennori | 2007-11-28 18:34 | 16.梔子豉湯類の薬味


<< 17.括蔞実・薤白剤の薬味 15.真武湯と附子湯の処方の薬... >>