芍薬の効用は、凝りがあり、引かれ引きつらるるの症状のとき、用いられる。つまり、筋肉を平均にします。
枳實は、熱をさまし、しこりを消す働きがあります。諸々の熱実の病や癰、膿腫などに作用します。 芍薬と枳實の薬味の入った処方を比較し表にしてみました。 ○芍薬と枳實の薬味の入った処方の相違(新古方薬嚢の薬味の分量) 傷寒論・金匱要略より条文を引用してみますと 傷寒論「辨太陽病脈證併治法上第五」の第30条より ●傷寒脈浮自から汗出て小便数、心煩微悪寒脚攣急するに反って桂枝湯を與へて、其の表を攻めんと欲するは此れ誤りなり、之を得て便ち厥し咽中乾き煩燥吐逆する者には、甘草乾姜湯を作り之を與へて以て其の陽を復す、若し厥愈え足温かなる者には更に芍薬甘草湯を作り之を與うれば其の脚即ち伸ぶ、若し胃氣和せず譫語する者は少しく調胃承気湯を與う、若し重ねて汗を発し復た焼鍼を加えたる者は、四逆湯之れを主どる。 傷寒論「辨太陽病脈證併治法上第五」の第31条より ●問ふて曰く、證陽旦に象りたれば、法を按じ、之れを治したるに増劇厥逆し咽中乾き両脛拘急して譫語す、師のたまひて夜半に手足まさに温まるべく両脛まさに伸ぶべしと言われたるに後に、師の言はれたるが如くなりぬ、何を以て此れを知られたるや、答へて曰く寸口の脈浮にして大、浮は則ち風となし大は則ち虚となす、風は則ち微熱を生じ、虚は則ち両脛攣る、病證桂枝を象りたるに因り、附子を加へて其間につらぬ桂を増して汗を出ださしむれば附子は經を温むれども亡陽するが故に厥逆咽中乾き煩燥し陽明内に結ぼれ譫語煩乱す、更に甘草乾姜湯を飲ましむれば夜半に陽気環り両足當に熱すべし、脛尚ほ少しく拘急すれば重ねて芍薬甘草湯を與ふ、爾かすれば乃ち脛伸ぶ、承気湯を以て少しく溏せしむれば則ち其の譫語止む故に病の愈ゆべきを知る。 傷寒論「辨太陽病脈證併治中第六」の第38条より ●汗を発し病解せず反って悪寒する者は虚するが故なり、芍薬甘草附子湯之れを主どる。 金匱要略「婦人産後病脈證治第二十一」の第4条より ●産後、腹痛、煩満、臥するをえざるは、枳實芍薬散之れを主どる。 金匱要略「瘡癰腸癰浸淫病脈證併治第十八」の第7条より ●排膿散方 傷寒論「辨少陰病脈證併治第十一」の第38条より ●少陰病、四逆し其の人、或は欬し、或は悸し、或は小便不利し、或は腹中痛み或は泄利下重する者は、四逆散之れを主どる。 芍薬の氣味と効用について 神農本草経に曰く 味苦平、邪気腹痛を主どり血痺を除き堅積を破り寒熱疝瘕を主どり痛を止め小便を利し氣を益すと。 薬徴に曰く 結實して拘攣するを主治し旁ら腹痛、頭痛、身体不仁、疼痛、腹満、咳逆、下痢、腫膿を治すと。 新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 結實とは凝りの事なり、拘攣とは引かれ引きつらるるを謂うなり、芍薬はよくたるみを引きしめ痛みを除くの効あり、結實も拘攣も弛みより来るものと見るべし。 甘草の氣味と効用について 神農本草経に曰く 甘草味甘平、五臓六腑寒熱邪気を主どり筋骨を堅め肌肉を長じ気力を倍にし金瘡の腫れや毒を解す久服すれば身を軽くし年を延ぶと。 薬徴に曰く 甘草主治急迫なり故に裏急急痛を治し旁ら厥冷煩躁衝逆等の諸般急迫の毒を治すると。 新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 甘草は味甘平、緩和を主として逆をめぐらす効あり、逆とは正に反する事なり、めぐるとは元に戻る事なり、故によく厥を復し熱を消し痛を和らげ煩を治す。 附子の氣味と効用について 薬徴に曰く 逐水を主どるなり、故によく悪寒身体四肢及骨節疼痛或沈重或不仁或厥冷を治し旁ら腹痛失精下痢するを治すと。 新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 附子味辛温、表を實し陽を益し津液を保つ故に悪寒し厥冷を復す。 枳實の氣味と効用について 神農本草経に曰く 枳實味苦寒、大風皮膚中に在り麻豆の如く痒きを苦しむを主どり寒熱の結を除き痢を止め肌肉を長じ五臓を利し氣を益し身を軽くすと。 薬徴に曰く 枳實主治結實の毒なり旁ら胸満胸痺腹満腹痛を治すと。 新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 味苦寒、熱をさまし、しこりを消すの効あり。又痛みをゆるめ腫を去る、故に諸の熱實病又は癰腫等を治するに用いらる。 柴胡の氣味と効用について 神農本草経に曰く 味苦平、心腹腸胃中結氣飮食積聚寒熱邪氣を主どり陳きを推し新しきを致し久服すれば身を軽くし目を明らかに精を益すと。 薬徴に曰く 柴胡主治胸脇苦満也、旁ら寒熱往来、腹中痛、胸下痞鞕を治すと。 新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 半表半裏の熱を去る、故に胸脇苦満、胸中痛、心煩、往来寒熱、頸項強、胸下痞鞕、心下満等を治す。 桔梗の氣味と効用について 神農本草経に曰く 桔梗味辛微温、胸脇痛むこと刀にて刺さるるが如く腹満腸鳴幽幽驚恐悸氣するを主どると。 薬徴に曰く 桔梗主治濁涶腫膿也旁ら咽喉を治すと。 新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 桔梗味辛微温咳を止め痰を去り、膿を消し痛みを鎮む。又よく咽痛を治す。此みな氣を増し氣の鬱滞を除くに基くものなり。
by shizennori
| 2007-11-16 19:45
| 14.芍薬と枳實の薬味
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