11.甘草乾薑湯と人参湯と苓姜朮甘湯の薬味の相違

体を上・中・下の三つの部分に分けますと、横隔膜から上の部分を上焦と言い、腹部全体を中焦と言い、臍から下の部分を下焦と言います。
甘草乾姜湯は肺中冷、人参湯は理中を、苓薑朮甘湯は下半身の冷えに応じます。

上焦には甘草乾姜湯、中焦には人参湯、下焦には苓薑朮甘湯が作用いたします。
薬味の乾姜の量が、上焦は2、中焦は3、下焦は4となり、下に行けば行くほど多くなります。

甘草乾姜湯・人参湯・苓薑朮甘湯の薬味の相違を表にしてみました。


○甘草乾姜湯・人参湯・苓薑朮甘湯の薬味の相違
(新古方薬嚢の薬味の分量)

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傷寒論・金匱要略より条文を引用してみますと

傷寒論「辨太陽病脈證併治法上第五」の第30条より
●傷寒脈浮自から汗出て小便数、心煩微悪寒脚攣急するに反って桂枝湯を與へて、其の表を攻めんと欲するは此れ誤りなり、之を得て便ち厥し咽中乾き煩燥吐逆する者には、甘草乾姜湯を作り之を與へて以て其の陽を復す、若し厥愈え足温かなる者には更に芍薬甘草湯を作り之を與うれば其の脚即ち伸ぶ、若し胃氣和せず譫語する者は少しく調胃承気湯を與う、若し重ねて汗を発し復た焼鍼を加えたる者は、四逆湯之を主どる。


金匱要略の「肺痿肺癰欬嗽上気病脈證治第七」の第6条に
●肺痿、涎沫を吐して欬せざる者は其の人渇せず、必ず遺尿、小便数なり、然る所以の者は、上虚し下を制する能はざるを以っての故なり、此れ肺中冷と為す。必ず眩し、涎唾多し、甘草乾姜湯以って之れを温む。


傷寒論「辨霍乱病脈證併治第十三」の第6条より
●霍亂、頭痛発熱、身疼痛、熱多く水を飲まんと欲する者は五苓散を主どる、寒多く水を用いざる者は理中丸之を主どる。


傷寒論「辨陰陽易差後勞復病證併治第十四」の第5条より
●大病差えて後、喜んで唾はき久しく了了とせざる者は、胃上に寒あり、當に丸薬を以て之を温むべし、理中丸に宜し。


金匱要略の「胸痺心痛短気病脈證治第九」の第5条より
●胸痺、心中痞、留氣結ぼれて胸にあり、胸満脇下より心を逆搶するは、枳實薤白桂枝湯之を主どる、人参湯も亦、之を主どる。


金匱要略の「五臓風寒積聚病脈証併治第十一」の第16条より
●腎著の病は、其の人、身体重く、腰中冷え、水中に坐するが如く、形水状の如くにして、反って渇せず、小便自利し、飲食故の如きは、病下焦に属す。身労して汗出で、衣裏冷湿し、久久にして之を得。腰以下冷痛し、腰重きこと五千銭を帯ぶるが如し。甘姜苓朮湯之を主る。


甘草の氣味と効用について
神農本草経に曰く 甘草味甘平、五臓六腑寒熱邪気を主どり筋骨を堅め肌肉を長じ気力を倍にし金瘡の腫れや毒を解す久服すれば身を軽くし年を延ぶと。 
薬徴に曰く 甘草主治急迫なり故に裏急急痛を治し旁ら厥冷煩躁衝逆等の諸般急迫の毒を治すると。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 甘草は味甘平、緩和を主として逆をめぐらす効あり、逆とは正に反する事なり、めぐるとは元に戻る事なり、故によく厥を復し熱を消し痛を和らげ煩を治す。
白朮の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味苦温、風寒湿痺死肌痙疽を主どり汗を止め熱を除き食を消す。煎と作して餌すれば久しく服して身を軽くし年を延べ飢えずと。
薬徴に曰く 利水を主どるなり、故によく小便自利不利を治し旁ら身煩疼痰飲、失精、眩冒、下痢、喜唾を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 水をさばきその滞りを除きよく小便を調ふ。故に小便不利、小便自利を治す。不利は出工合悪きを謂ふ。叉小便少なきをも言ふ。自利はよく出る者を言ふ。則ち出過ぎる者の事。小便の出が悪い筈なのに反って出の好い者の事も自利と謂ふ。小便が少なくて下痢する者、小便の出が好くて便秘する者、筋や骨の痛む者、めまひのする者、頭の重い者、胃がふくれて食進まず或いは吐く者、朮のゆくべき場合には必ず小便の出工合を確むべし。
人参の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味甘微寒、五臓を補ひ精神を安んじ魂魄を定め驚悸を止どめ邪気を除き目を明らかにし心を開き智を益すことを主どり、久しく服すれば身を軽くし年を延ぶと。
薬徴に曰く 主治心下痞堅、痞鞭、支結なり旁ら不食嘔吐喜唾、心痛、腹痛、煩悸を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 乾きを潤し、しぶりを緩む。故に心下痞、痞堅、身痛、下痢、喜嘔、心痛、その他を治す。
乾姜の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味辛温、味辛温、胸満欬逆上気を主をどり中を温め血を止どめ汗を出だし風湿痺を逐ひ腸澼下痢を主どる。生者尤も良し、久服すれば息気をまもり神明に通ずと。
薬徴に曰く 結滞水毒を主治するなり、旁ら嘔吐、咳、下痢、厥冷、煩躁、腹痛、胸痛、腰痛を治す。生の生姜と乾かした生姜とは元一物にして薬効大いに異なる、自然の妙瘍まことに窮究し難きもの多し、而して乾姜の場合は散辛化して歛辛となる、生姜は進むことを主どり乾姜は守ることを主どる、万物の変化まことに計り知るべからざる所あり、乾姜は深きを温むる効あり、故に厥を回し下痢を止め嘔を治す。
茯苓の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味甘平、胸脇逆氣憂恚驚邪恐悸心下結痛、寒熱煩満欬逆口焦舌乾を主どり小便を利し久服すれば魂を安んず神を養ひ飢えず年を延ぶと。
薬徴に曰く 茯苓の主治は悸及び肉じゅん筋惕なり旁ら小便不利、頭眩、煩燥を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 水を収め乾きを潤しその不和を調ふ故に動悸を鎮め衝逆を緩下し水を利して眩悸等を治す。
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by shizennori | 2007-11-07 19:09 | 11.甘草乾姜湯の類処方


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