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8.厚朴・大黄剤の薬味の相違

腹満や胸満に効果のある気剤の厚朴〔苦温〕大黄〔苦寒〕の入っている処方を傷寒論・金匱要略から取り出してみますと、どちらも苦剤であり、一方は温め、片一方は冷やします。

この生薬の組み合わせの薬味の相違を表にしてみました。


○厚朴・大黄剤の薬味の相違(新古方薬嚢の薬味の分量)
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傷寒論・金匱要略より条文を引用してみますと

金匱要略「腹満寒疝宿食病脈證治第十」の第9条
●病腹満発熱十日脈浮にして數、飮食故のごとし、厚朴七物湯之を主る。


金匱要略「腹満寒疝宿食病脈證治第十」の第11条
●痛んで閉じる者は、厚朴三物湯之を主る。


金匱要略「痰飲欬嗽病脈證併治第十二」の第27条
●支飲胸満の者は、厚朴大黄湯之を主る。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第31条より
●陽明病脈遅汗出づと雖も、悪寒せざる者は、其の身必ず重く短気腹満して喘す、潮熱有る者は、此れ外解せんと欲す裏を攻むべきなり、手足に濈然として汗出づる者は、此れ大便已に
鞕きなり、大承気湯之を主どる、若し汗多く微に発熱悪寒する者は、外未だ解せざるなり、其の熱潮せざれば未だ承気湯を與うべからず、若し腹大満通ぜざる者は、小承気湯を與うべし、微しく胃氣を和し大いに泄下せしむる勿れ。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第32条より
●陽明病潮熱大便微に鞕き者には大承気湯を與うべし、鞕からざる者には之を與へず、若し大便せざること六七日なれば、恐らくは燥屎あらむ、之を知らんと欲するの法は、少しく小承気湯を與う、湯入りて腹中に轉失氣する者は此れ燥屎有り、乃ち之を攻むべし、若し轉失氣せざる者は此れ但だ初頭鞕く後必ず溏す、之を攻むるべからず、之を攻むれば必ず脹満し食する能はざるなり、水を飲まんと欲する者に水を與うれば則ち噦す、其の後発熱する者は必ず大便復鞕くして少なきなり、小承気湯を以て之を和し、轉失氣せざる者は慎みて之を攻むべからず。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第36条より
●傷寒若くは吐し若くは下し後解せず、大便せざること五六日より上りて十餘日に至り、日晡所潮熱を発し悪寒せず獨語鬼を見る状ちの如し、若し劇き者は、発すれば則ち人を識らず循衣摸牀惕して安からず微喘直視す、脈弦なる者は生き濇なる者は死す、微なる者但発熱譫語する者は、大承気湯之を主どる、若し一服して利すれば後服を止む。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第39条より
●陽明病譫語潮熱有り、反て食する能はざる者は胃中必ず燥屎五六枚有るなり、若し能く食する者は但だ鞕きのみ、宜しく大承気湯にて之を下すべし。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第41条より
●汗出で譫語する者は、燥屎有り胃中に在るを以て此を風と為すなり、須く之を下すべし、過經は乃ち之を下すべし、之を下すこと若し早ければ語言必ず乱る、表虚裏実を以ての故なり、之を下せば則ち愈ゆ、大承気湯に宜し。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第44条より
●二陽の併病、太陽の證罷みて、但だ潮熱を発し、手足漐漐と汗出で、大便難くして譫語する者は之を下せば則ち愈ゆ、大承気湯に宜し。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第59条より
●陽明病之を下して心中懊憹して煩し胃中に燥屎有る者は攻むべし、腹微満するは、初頭鞕く後必ず溏す、之を攻むべからず、若し燥屎有る者は大承気湯に宜し。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第61条より
●病人煩熱汗出でて則ち解す、又瘧状の如く日晡所発熱する者は陽明に属するなり、脈實なる者は之を下すに宜し、脈浮虚なる者は汗を発するに宜し、之を下すには大承気湯を與う、汗を発するには桂枝湯に宜し。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第62条より
●大いに下して後ち六七日大便せず、煩解せず、腹滿痛する者は此れ燥屎有るなり、然る所以の者は、本と宿食有るが故なり、大承気湯に宜し。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第63条より
●病人小便不利大便乍ち難、乍ち易く時に微熱有り喘冒して臥する能はざる者は燥屎有るなり大承気湯に宜し。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第73条より
●病を得て二三日、脈弱、太陽柴胡の證無く、煩燥心下鞕く、四五日に至れば、能く食すと雖も小承気湯を以て少少與へ微に之を和す、小しく安からしめ六日に至り、承気湯一升を與う、若し大便せざること六七日小便少なき者は、食す能はずと雖も、但だ初頭鞕く後ち必ず溏す、未だ定まりて鞕をなさず、之を攻むれば必ず溏す、小便利し屎の定鞕するを須ち、乃ち乃を攻むベし、大承気湯に宜し。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第74条より
●傷寒六七日、目中了了たらず、睛和せず表裏の證無く大便難く、身微に熱する者は此れ實と為すなり、急に之を下せ、大承気湯に宜し。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第75条より
●陽明発熱、汗多き者は、急に之を下せ、大承気湯に宜し。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第76条より
●汗を発し解せず、腹滿痛する者は、急に之を下せ、大承気湯に宜し。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第77条より
金匱要略「腹満寒疝宿食病脈證治第十」の第13条より
●腹満減ぜず、減ずるも言うに足らず、當に之を下すべし、大承気湯に宜し。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第78条より
●陽明少陽の合病、必ず下利し、其の脈負かざる者は、順なり、負く者は失なり、互いに相剋賊す、名づけて負と為すなり、脈滑にして數の者は、宿食有るなり、當に之を下すべし、大承気湯に宜し。


傷寒論「辨少陰病脈證併治第十一」の第40条より
●少陰病、之を得て二三日、口燥咽乾する者は、急に之を下せ、大承気湯に宜し。


傷寒論「辨少陰病脈證併治第十一」の第41条より
●少陰病自から清水を利し、色純青、心下必ず痛み口乾燥する者は、急に之を下せ、大承気湯に宜し。


傷寒論「辨少陰病脈證併治第十一」の第42条より
●少陰病六七日、腹脹大便せざる者は、急に之を下せ、大承気湯に宜し。


傷寒論「辨可下病脈證併治第二十一」の第3条より
金匱要略「嘔吐噦下利病脈證治第十七」の第40条より
●下利三部脈皆平にして、之を按ずるに、心下鞕き者は、急に之を下せ、大承気湯に宜し。


傷寒論「辨可下病脈證併治第二十一」の第4条より
金匱要略「嘔吐噦下利病脈證治第十七」の第41条より
●下利、脈遅にして滑なる者は内実なり、利は未だ止むを欲せず、當に之を下すべし、大承気湯に宜し。


傷寒論「辨可下病脈證併治第二十一」の第5条より
金匱要略「腹満寒疝宿食病脈證治第十」の第24条より
●問うて曰く、人病みて宿食あるは何を以て之を別たん。師の曰く寸口脈浮にして大、之を按ずれば反って澁、尺中も亦微にして澁、故に宿食有るを知る、當に之を下すべし、大承気湯に宜し。


傷寒論「辨可下病脈證併治第二十一」の第6条より
●下利、食を欲せざる者は宿食有るを以ての故なり、當に之を下すに大承気湯を與うるが宜しかるべし。


傷寒論「辨可下病脈證併治第二十一」の第7条より
金匱要略「嘔吐噦下利病脈證治第十七」の第43条より
●下利差えて後、其の年月日に至り、復た発する者は、病盡きざるを以ての故なり、當に之を下すべし、大承気湯に宜し。


傷寒論「辨可下病脈證併治第二十一」の第8条より
金匱要略「嘔吐噦下利病脈證治第十七」の第42条より
●下利、脈反って滑なるは、當に去らんとする所あるべし、之を下せば乃ち愈ゆ、大承気湯に宜し。


傷寒論「辨可下病脈證併治第二十一」の第9条より
●病、腹中滿痛する者は、此れを實と為すなり、當に之を下すべし、大承気湯に宜し。


傷寒論「辨可下病脈證併治第二十一」の第11条より
●脈雙弦にして遅なる者は、必ず心下鞕く、脈大にして緊なる者は、陽中陰あるなり、以て之を下すべし、大承気湯に宜し。


金匱要略「痙濕暍病脈證第二」の第13条
●痙の病たる胸満口噤し臥して席に着かず脚攣急し、必ず介齒す、大承気湯を與うべし。


金匱要略「腹満寒疝宿食病脈證治第十」の第25条より
●脈數にして滑の者は、實なり、此れ宿食有り、之を下せば愈ゆ、大承気湯に宜し。


金匱要略「腹満寒疝宿食病脈證治第十」の第26条より
●下利し食を欲せざる者、宿食有るなり、當に之を下すべし、大承気湯に宜し。


金匱要略「婦人産後病脈證治第二十一」の第2条より
●病解して能く食し、七八日更に発熱する者は、此れ胃實と為す、大承気湯之を主どる。


金匱要略「婦人産後病脈證治第二十一」の第6条より
●産後七八日、太陽の證無く、少腹堅痛するは、此れ悪露盡きず、大便せず、煩躁発熱し、切脈微實、再倍発熱し、日晡時、煩躁する者は食せず、食すれば則ち譫語し夜に至れば即ち愈ゆ、宜しく大承気湯之を主るべし。熱、裏にあり、結ぼれて膀胱に在るなり。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第37条より
●陽明病、其の人多く汗すれば、津液外出し、胃中燥くを以て、大便必ず鞕し、鞕くして則ち譫語するは、小承気湯之を主どる、若し一服して譫語止めば更に復た服するなかれ。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第38条より
●陽明病、譫語潮熱を発し、脈滑なる者は、小承気湯之を主どる、承気湯一升を與うるに因り、腹中轉失氣する者は、更に一升を服す、若し轉失氣せざれば、更に之を與うる勿れ、明日大便せず脈反て微濇の者は裏虚なり、治し難しと為す、更に承気湯を與うべからざるなり。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第72条より
●太陽病、若しくは吐し、若しくは下し、若しくは汗を発し、微煩小便數、大便因りて鞕き者は、小承気湯を與へ之を和すれば愈ゆ。


金匱要略「嘔吐噦下利病脈證治第十七」の第44条より
●下利譫語する者は、燥屎有るなり、小承気湯之を主どる。


金匱要略「嘔吐噦下利病脈證治第十七」の第51条より
●千金翼小承気湯は、大便通ぜず、噦し、しばしば譫語するを治す。


傷寒論「辨太陽病脈證併治法上第五」の第30条より
●傷寒脈浮自から汗出で小便數、心煩微悪寒脚攣急するに反って桂枝湯を與へて、其の表を攻めんと欲するは此れ誤りなり、之を得て便ち厥し咽中乾き煩燥吐逆する者には、甘草乾姜湯を作り之を與へて以て其の陽を復す、若し厥愈え足温かなる者には更に芍薬甘草湯を作り之を與うれば其の脚即ち伸ぶ、若し胃氣和せず譫語する者は少しく調胃承気湯を與う、若し重ねて汗を発し復た焼鍼を加えたる者は、四逆湯之を主どる。


傷寒論「辨太陽病脈證併治中第六」の第40条より
●汗を発したる後、悪寒する者は虚するが故なり、悪寒せず但だ熱する者は實なり、當に胃氣を和すべし、調胃承気湯を與う。


傷寒論「辨太陽病脈證併治中第六」の第67条より
●太陽病、未だ解せず、陰陽の脈倶に停するは必ず先づ振慄し汗出でて解す、ただ陽脈微なる者は先づ汗出でて解す、ただ陰脈微なる者は、之れを下して解せ、若し之れを下さんと欲すれば宜しく調胃承気湯之れを主どるべし。


傷寒論「辨太陽病脈證併治中第六」の第80条より
●傷寒十三日解せず、過經、譫語する者は、熱有るを以てなり、當に湯を以て、之れを下すべし、若し小便利する者は、大便當に鞕かるべし、而るに反って下利し、脈調和する者は、醫丸薬を以て之を下すを知る、其の治に非ざるなり、若し自下利する者は、脉當に微厥すべし、今反って和する者は、此れを内実とするなり、調胃承気湯之れを主どる。


傷寒論「辨太陽病脈證併治中第六」の第100条より
●太陽病、過經、十餘日、心下温温吐せんと欲して、胸中痛み、大便反って溏し、腹微満し、鬱鬱として微煩す、この時に先立ち、自から吐下を極むる者には、調胃承気湯を與う、若し爾かせざる者には、與うべからず、但嘔せんと欲して、胸中痛み、微に溏する者は、此れ柴胡の證に非らず、嘔するを以ての故に、吐下を極めたるを知るなり。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第30条より
●陽明病、吐さず下らず心煩する者は、調胃承気湯を與うべし。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第70条より
●太陽病、三日汗を発し解せず、蒸蒸として発熱する者は、胃に属するなり。調胃承気湯之を主どる。


傷寒論「辨陽明脈證併治第八」の第71条より
●傷寒、吐して後、腹脹満する者は、調胃承気湯を與う。


金匱要略「嘔吐噦下利病脈證治第十七」の第19条より
●食し已り即ち吐する者は、大黄甘草湯之を主どる。


厚朴の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 味苦温、腹を温め腹満を除く。叉胸満、咳、喘、上氣等を治し、或は咽喉の塞へを治す。併し其の根元は腹満にあり。
大黄の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 味苦寒、裏に熱ありて大便出でず便秘し叉は下痢するを治す。叉腹痛、腹満を治す。或は内に熱あり、胃につかえありて吐する者を治す。或は頭痛する者を治す。大黄の行く所は内に熱あるが主なれば小便の色濃く口中燥き叉は眼の中赤き者等多し。
枳實の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 味苦寒、熱をさまし、しこりを消すの効あり。又痛みをゆるめ腫を去る、故に諸の熱實病又は癰腫等を治するに用いらる。
芒消の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 味苦寒、芒消は味苦寒燥けるを潤ほし熱を鎮め血行を能くするの効あり、故に裏に熱ある諸病に用ふ。
甘草の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 甘草は味甘平、緩和を主として逆をめぐらす効あり、逆とは正に反する事なり、めぐるとは元に戻る事なり、故によく厥を復し熱を消し痛を和らげ煩を治す。
大棗の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 味甘平、攣引とはひきつり引かるる事なり、強急とはこはばりつまるなり、則ち大棗に緩和の効あるものと見ゆ、叉大棗には血の循りを良くするのハタラキあり。
桂枝の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 桂枝は味辛温、汗を発し表を調う、叉衝逆を主どると謂わる、衝逆とは下から上へつきあぐる勢いを云う。
by shizennori | 2007-10-27 21:21 | 8.厚朴・大黄剤の薬味


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