4.建中湯類の処方

金匱要略の「血痺虚労病脈證併治第六」に小建中湯、黄耆建中湯の処方が記載されています。
さらに「婦人産後病脈證治第二十一」に当帰建中湯があります。

この建中湯類の処方の比較を表してみました


○建中湯類の処方の薬味の相違(新古方薬嚢の薬味の分量)
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金匱要略より条文を引用してみますと

金匱要略「血痺虚労病脈證併治第六」第2条より
●血痺陰陽ともに微、寸口関上微尺中小緊、外證身体不仁、風痺状のごときは、黄耆桂枝五物湯之を主どる

金匱要略「血痺虚労病脈證併治第六」第13条より
●虚労、裏急、悸衄、腹中痛み、夢に失精し四肢痠疼、手足煩熱、咽乾口燥するは小建中湯之を主る

傷寒論「太陽病中篇第74条」より
●傷寒、陽脈澁、陰脈弦、法當に腹中急痛すべき者は、先づ小建中湯を与ふ、差えざる者は小柴胡湯を与えて、之れを主どる

傷寒論「太陽病中篇第77条」より
●傷寒二三日、心中悸して煩する者は、小建中湯之れを主どる

金匱要略「黄疸病脈證併治第十五」第24条より
●男子黄、小便自利するには、當に虚労小建中湯をあたうべし

金匱要略「婦人雑病脈證併治二十二」第18条より
●婦人腹中痛むは、小建中湯之れを主どる

金匱要略「血痺虚労病脈證併治第六」第14条より
●虚労、裏急、諸の不足、黄耆建中湯之を主る

金匱要略「婦人産後病脈證治第十二」第12条より
●千金内補當帰建中湯は、婦人産後の虚羸不足、腹中刺痛止まず、吸吸少氣し、或いは少腹拘急摩痛を苦しみ、腰背に引き、食飲する能はざるを治す、産後一月は日に四五剤を服し得て、善しと為す、人をして強壮ならしむる方。

桂枝の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味辛温、上気欬逆、結気、喉痺、吐吸を主り、関節を利し、中を補い血を益す
薬徴に曰く 桂枝主治衝逆なり傍ら奔豚頭痛発熱悪風汗出身痛を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 桂枝は味辛温、汗を発し表を調う、叉衝逆を主どると謂わる、衝逆とは下から上へつきあぐる勢いを云う、動悸頭痛息切れ肩のはり等此れ衝逆より生ずる者あり、表の陽気虚する時はよく此衝逆を発す、桂枝よく表を救う、故に斯く称するものなるべし。
芍薬の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味苦平、邪気腹痛を主どり血痺を除き堅積を破り寒熱疝瘕を主どり痛を止め小便を利し氣を益すと。
薬徴に曰く 結實して拘攣するを主治し旁ら腹痛、頭痛、身体不仁、疼痛、腹満、咳逆、下痢、腫膿を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 結實とは凝りの事なり、拘攣とは引かれ引きつらるるを謂うなり、芍薬はよくたるみを引きしめ痛みを除くの効あり、結實も拘攣も弛みより来るものと見るべし。
生姜の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味辛温、胸満欬逆上氣を主どり中を温め血を止どめ汗を出だし風湿痺を逐ひ腸澼下痢を主どる生なる者尤も良し久服すれば息氣を主どり神明に通ずと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 生姜味辛温、氣を扶け外を實す、之れ生姜の発汗薬に多く用ひらるる所以なり。
甘草の氣味と効用について
神農本草経に曰く 甘草味甘平、五臓六腑寒熱邪気を主どり筋骨を堅め肌肉を長じ気力を倍にし金瘡の腫れや毒を解す久服すれば身を軽くし年を延ぶと。 
薬徴に曰く 甘草主治急迫なり故に裏急急痛を治し旁ら厥冷煩躁衝逆等の諸般急迫の毒を治すると。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 甘草は味甘平、緩和を主として逆をめぐらす効あり、逆とは正に反する事なり、めぐるとは元に戻る事なり、故によく厥を復し熱を消し痛を和らげ煩を治す。
大棗の氣味と効用について
神農本草経に曰く 味甘平、心腹邪気を主どり中を安んじ脾を養ひ十二経を助け胃氣を平にし九竅を通じ少氣少津液身中の不足大驚四肢重を補ひ百薬を和し久服すれば身を軽くし年を延ぶと。
薬徴に曰く 攣引強急を治すと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 攣引とはひきつり引かるる事なり、強急とはこはばりつまるなり、則ち大棗に緩和の効あるものと見ゆ、叉大棗には血の循りを良くするのハタラキあり。
黄耆の氣味と効用について
神農本草経に曰く 黄耆味甘微温、癰疽久敗瘡膿を排し痛を止どめ大風癩疾五痔鼠瘻を主どり虚を補い小児百病を主どると。
薬徴に曰く 肌表の水を主治す、故に皮水、黄汗、盗汗、身体の腫れ、不仁を治し、疼痛、小便不利を兼治す。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 黄耆味甘微温、外を補い堅きを緩め寒を除くことを主どる、故に自汗盗汗を治し肌表の滞を消す。
膠飴の氣味と効用について
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 膠飴味甘温、急を緩め力を与ふ故によく裏急を治し腹痛を和す。
當帰の氣味と効用について
神農本草経に曰く 當帰味甘温、欬逆上氣、温瘧寒熱洗洗皮膚中に在り婦人漏下子を絶つを主どる諸悪瘡瘍金瘡の者之を飲ますと。
新古方薬嚢(荒木朴庵)ボク曰く 當帰味甘温、中を緩め外の寒を退け氣血の行りをよくすることを主どる、故に手足を温め、腹痛を治し、内を調へ血を和し胎を安んず、之れ當帰の好んで婦人血の道の諸病、諸の冷え込み等に用ひらるる所以なるべし。
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by shizennori | 2007-08-28 13:21 | 4.建中湯類の処方


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